「フューチャー・イズ・ワイルド」

「お母さんただいま」
知人のお宅を訪問していたとき、中学生の息子さんが元気な声で帰ってきました。
最近は親に挨拶できる子が少ないと思っていたので
どんな風に育てたらあんな爽やかな息子さんになるのか聞いてみました。
「挨拶だけで、他のことは全然ダメよ」
恥ずかしそうにそう答えただけで、子育てのヒントは教えてもらえませんでした。
当時2歳だった息子がそんな風になればいいなあと思いながらも
挨拶をしなさいと教えるわけでもなく、こちらから「おかえり」と
声をかけてやれる暮らしも出来ないままにふと気付くと息子は
私が返事をするまで「お母さんただいま」と言い続ける子になっていました。

一度も、ただいま、と言える子になって欲しいと言ったことは無かったのですが
そんな子になって欲しいという願いが通じたのでしょうか。
ただ、知人が言ったように他のことは全然ダメで、あの時は謙遜と思ったけれど
ああ、こういうことか、と納得しました。

元気で人様に迷惑かけなければそれでいい、と勉強しなさいとも
早く寝なさいとも言わずに野放しで育てましたが
一つだけ、耳にタコができるほど息子に言ったことがあります。

「先天的な病気の遺伝子を見つけて治せるように研究してほしい」ということでした。
DMP(進行性筋ジストロフィー)という病気を知り
原因が解明されないまま教え子を失った時、自分の無力さに涙しました。
そして、私があの子たちにしてあげられることは?と
考えた時、息子に、ことあるごとにそんなことを言うようになりました。
息子はいつも、勉強するの嫌いやし、無理やなあ・・・・と気の無い返事をしていました。

夏休みに提出した読書感想文を息子が私の机上に置いているので
見ていいのかなあ・・とそっと覗いてみると、読んだ本は
「フューチャー・イズ・ワイルド」
感想文の最後は
「生命の進化かDNA、いでんしなどを調べる学者になりたいと思っています」
遺伝子という漢字が書けないようでは期待薄ですが
まだ中学1年生・・・奇跡を信じてやりたいと思います。
出来の悪い息子だけど、人生を動かすのは生まれ持った能力や
親の財産ではなく、本人の情熱なのでしょう。
心に強く描いたことは良かれ悪しかれ実現すると言われています。
それは心に描き、イメージとして反復することが実現へのエネルギーになるからです。
これからも将来の夢はどんどん変化すると思いますが
遠回りしても形を変えても、心に描いた夢に向かって努力できる子に
なってくれたらいいなあ、と思います。

2004.9.2

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